目次
色々考えすぎて眠れないときの理由・原因
色々考えすぎて眠れないときは、主に以下のような理由があると言えます。
- 精神的な理由
- 身体的な理由
- 物理的な理由
精神的な理由
就寝前に考え事が頭から離れないときは、不安やストレスなどの精神的な負担が影響している可能性があります。ここで言う精神的な負担とは、仕事や人間関係の悩み、将来への不安などで脳が休めない状態であることを指します。
精神的な負担により、脳が覚醒したままだと、自然な眠気を誘う「メラトニン」というホルモンの分泌リズムが乱れてしまいます。その結果、寝つきが悪くなりやすくなるでしょう。
例えば、以下のような場面が該当すると言えます。
- 翌日の会議でうまく発言できるか心配になる
- 上司へのメール返信が適切だったのか何度も考え直してしまう
- 同僚との関係が悪くならないかを考えてしまう
- 給与が増えず、将来の生活に不安を感じる
また、眠れないことを意識しすぎると「眠れないと困る」という焦りが強まり、不安感も増してしまう場合があるため、注意が必要です。
身体的な理由
身体的な理由によって入眠が妨げられ、結果的に眠れない原因になっている場合があります。
ここで言う身体的な理由とは、痛みや痒み、胃腸の不快感、体のほてりなど、体に生じる不快な感覚を指します。
体の不調が気になってしまうと、心も休まらず、思考が止まりにくくなるため、結果的に眠れない状態につながる可能性があります。
例えば、以下のようなケースでは身体的不調が睡眠の妨げになる可能性があります。
- 肩こりや腰痛が気になって寝返りが増える
- 鼻づまりや喉の違和感で寝苦しく感じる
- 胃もたれがして横になると余計につらくなる
- かゆみが気になって寝付けない
なお、身体的な不調が原因で眠れない日が続く場合は、不調の緩和や改善に努めてみると良いでしょう。
物理的な理由
物理的な理由によって寝付きにくくなると、気持ちが落ち着かず、そこから考えごとが止まらなくなることがあります。
ここで言う物理的な理由とは、寝室の温度や湿度、明るさ、音、寝具の硬さなどを指します。
眠りにくい環境が続くと、体が落ち着かず、その不快感から思考が切り替わりにくくなるといった傾向が見られることがあります。
例として、次のような状況が考えられます。
- 寝室の照明が明るく、光が気になって眠りに入りづらくなる
- 外の音が耳につき、意識が集中してしまう
- マットレスや枕が合わず、体勢を何度も変えてしまう
- 室温が暑すぎたり寒すぎたりして、眠りに入りにくい
なお、感じ方には個人差があるため、自分にとって快適と思える環境づくりを意識してみると良いでしょう。
色々考えすぎて眠れないときの対処法
色々考えすぎて眠れないときの対処法には、以下の方法があります。
- 入眠前にリラックスする
- 入眠前は電子機器を見ないようにする
- よく眠れるツボを押す
- 深呼吸する
- 寝具を新しくする
- 適度に運動する
- 悩みごとを書き出す
- 病院を受診する
- 筋弛緩法を試す
入眠前にリラックスする
ぬるめのお湯への入浴や軽いストレッチなどで副交感神経を優位にすると、リラックスして眠りやすくなると言われています。
副交感神経とは、心身をリラックスさせる働きを持つ神経で、眠りにつくために重要な役割を担っていると考えられています。副交感神経が働くと深部体温がゆっくり下がり、自然に眠気が生じやすいです。
リラックスにつながる可能性がある方法として、次のような例があります。
- 就寝1〜2時間前に38〜40℃のお湯に10分浸かる
- ラベンダーのアロマを寝室で焚く
- 肩回しや股関節ストレッチで全身を伸ばす
- 照明を暖色で少し暗めに調整する
ちなみに、熱いお湯での入浴は、体を覚醒させる交感神経を刺激するとされており、リラックスとは逆の状態になりやすいため、注意が必要です。
入眠前は電子機器を見ないようにする
就寝前にスマホやPCなどの電子機器の使用を控えると、メラトニンの分泌低下を抑え、寝つきが良くなると言われています。
電子機器の画面から発せられる「ブルーライト」は、体内時計に影響を与え、眠気を遠ざけるとされています。ブルーライトの刺激により体内時計が乱れると、就寝時間になっても眠気を感じにくくなる可能性があります。
電子機器による覚醒を抑えて、寝つきを良くするために、次の対策が有効とされています。
- 就寝2時間前になったら、端末を寝室の外へ置く
- 寝る前に電子機器を使う場合は、ブルーライトの少ない暖色フィルターを設定する
- 電子機器の代わりに、紙の本を読んだり静かな音楽を流す
また、スマホの通知音や振動が気になって眠りが浅くなることもあるため、スマホを寝室に持ち込む場合には、通知をオフにすると良いでしょう。
よく眠れるツボを押す
入眠前にリラックスを促すツボを押すことも、色々考えすぎて眠れないときの対処法のひとつです。
ツボ押しは東洋医学に由来したケア方法の一つで、ツボを刺激することで心身の症状を和らげることができると考えられています。また、睡眠に良いとされるツボを刺激することで、副交感神経が優位になりやすく、自然な眠気を誘いやすいとされています。
眠りをよくするとされる代表的なツボを5つ紹介します。
- 失眠:足裏かかとの中央を親指で5秒押す
- 神門:手首小指側のくぼみを5秒押す
- 安眠:耳たぶの後ろのくぼみを円を描くように刺激
- 内関:前腕の内側、手首のしわから指3本分上を親指で5秒押す
- 百会:頭頂部のくぼみをゆっくり3回ほど押し下げる
なお、ツボ押しは、痛みを感じるほど強く押さず、心地良い強さで行うと効果的です。
深呼吸する
深呼吸をすると、心拍数が下がり、寝つきが良くなると考えられています。
深呼吸をし、呼吸を整えることで副交感神経を優位にし、体をリラックスへと導くことができると言われています。また、深呼吸によって酸素が体に行きわたりやすくなり、脳の興奮がやわらぐことで、自然な眠気が促されるでしょう。
基本的な深呼吸のコツは、次の通りです。
- 4秒かけて鼻から息を吸い、6〜8秒かけて口からゆっくり吐く
- 肩の力を抜き、仰向けで行う
- 息を吐くときに、考え事を手放すイメージを持つ
ただし、めまいや息苦しさを感じた場合には、無理をせずに中断して、落ち着いてから再開しましょう。
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寝具を新しくする
寝具を見直すことで、寝心地が改善され、眠りやすくなる場合があります。
自分に合わない寝具を使い続けると、寝苦しさや違和感がストレスとなり、眠りを妨げる一因になると言われています。
そこで、自分に合った寝具に変えることで、結果的に眠りやすくなるでしょう。
寝具を選ぶ際には、次のポイントを意識すると良いと言えます。
- 高さを調整できる枕を選ぶ
- 硬さを組み合わせて体に合うマットレスを選ぶ
- 吸湿性が高いコットンやリネン素材を選ぶ
- 季節に合わせて掛け布団の厚さを選ぶ
また、寝具は長期間使うもののため、可能であれば店舗で実際に寝心地を試してから選ぶと安心感を持てます。
適度に運動する
日中に軽い運動を取り入れると、夜に自然な眠気を感じやすいと言われています。
ここで言う運動とは、ウォーキングやヨガなど30分以内で終わる程度の強度の活動のことです。
適度な運動をして、自律神経を整えたり、体温のリズムを調整したりすることで、入眠を助ける働きがあるとされています。
次のような運動は、寝つきが良くなると考えられています。
- 朝の散歩や通勤時のウォーキング
- 日中の軽いストレッチや体操
- 夕方までに行う短時間のジョギング
- ヨガやピラティス
なお、寝る前の激しい運動は交感神経を刺激し、入眠を遅らせる可能性があるため、避けた方が良いでしょう。
悩みごとを書き出す
頭の中にある悩みごとを紙に書き出すと、気持ちが整理されて眠りにつきやすくなる場合があります。
不安や心配ごとをそのままにしておくと、頭の中で何度も繰り返し考えてしまい、入眠を妨げる原因になると言われています。
そこで、悩みごとを書き出すことで、考えごとが視覚的に整理され、脳の働きが落ち着く可能性が高いです。
悩みを書き出す際には、次のポイントを意識すると良いでしょう。
- 寝る30分前に 5分、ノートに気持ちを書き出す
- 書くときは「今日できたこと」など前向きな内容も加える
- 書き終えたら読み返さず、そのまま処分する
注意点として、不安が強い内容を書き出すと、かえって気持ちが高ぶり、逆に眠れなくなる場合があるため、注意が必要です。
病院を受診する
セルフケアを行っても不眠が続く場合は、病院を受診をし、専門医に相談すると良いでしょう。
不眠は、生活習慣の乱れやうつ病、睡眠時無呼吸症候群などが原因であるケースも見受けられます。
病院を受診することによって、眠れない原因が明確になり、睡眠衛生指導や認知行動療法など、エビデンスに基づく適切な治療を受けられる可能性が高いです。
また、早期受診が回復を早めると考えられています。
筋弛緩法を試す
筋弛緩法を行うと、全身が温まりリラックスしやすくなると言われています。
筋弛緩法とは、筋肉を順番に緩める体操を指します。筋弛緩法をして、筋肉がリラックスすると血行が促進し、副交感神経が優位になりやすいと考えられています。
筋弛緩法は、一般的に以下のように行います。
- 手を握り5秒力を入れ、一気に脱力して10秒休む
- 肩をすくめて5秒キープし、ストンと落とす
- ふくらはぎを伸ばし5秒固め、ゆるめて10秒休む
また、首周りなど痛みが出やすい部位は無理をせず、心地良い範囲で行いましょう。
色々考えすぎて眠れない場合に考えうる病気
色々考えすぎて眠れない背景には、病気が関係している可能性もあります。
精神的な不調やホルモンバランスの変化が、睡眠リズムを乱すことがあるため、病気が眠れなさの背景にある場合も考えられます。
不眠の原因となり得る疾患は、以下の通りです。
- うつ病:気分の落ち込みが続き、入眠困難や早朝覚醒になり得る
- 不安障害:就寝時に強い不安と動悸が生じ、寝付きが悪化しやすい
- 自律神経失調症:交感・副交感神経の切替が不安定となり、熟睡感が低下しやすい
- 更年期障害:ホルモンの揺らぎでほてりや発汗が起こり、中途覚醒が増えやすい
- HSP(Highly Sensitive Person):刺激に敏感な気質で情報過多になりやすく、就寝時まで脳が休まりにくい
なお、症状が続く場合や、日常生活に支障が出る場合は自己判断せず、医療機関へ相談することが推奨されています。
【タイプ別】不眠の主な症状
不眠は4つのタイプに分けられており、対処法も異なると考えられています。
- 入眠障害
- 中途覚醒
- 早朝覚醒
- 熟眠障害
入眠障害
布団に入ってから、30分〜1時間以上眠れない状態が続く場合は、入眠障害の可能性があります。
入眠障害とは、なかなか寝つけずに眠りに付くのに時間がかかってしまう状態を指します。寝つけないことで焦りや不安が生まれ、さらに脳が覚醒しやすくなるという悪循環に陥る場合があります。
以下のような行動は、入眠障害の原因になり得ると考えられています。
- 就寝直前に、カフェインやアルコールを摂取する
- 寝室でスマホの操作を続ける
- 日中にほとんど体を動かさない
- 夕方以降に、長時間の昼寝をしてしまう など
また、布団に入ってから20分ほど経っても眠気を感じないときは、一度起きて読書やストレッチなど、落ち着ける行動を挟む方法もあります。
中途覚醒
夜中に何度も目が覚め、再入眠に時間がかかる状態は、中途覚醒と呼ばれています。
睡眠は本来、深い眠りと浅い眠りが周期的に繰り返されるものとされており、何らかの要因でこのリズムが乱れると、途中で目が覚めやすくなると考えられています。
中途覚醒の原因には、次のようなことが考えられるでしょう。
- 寝室の温度や湿度が高くて、寝汗をかく
- 夜間頻尿や痛みで、目が覚める
- アルコールが抜けるときに目が冴える
また、中途覚醒が続く場合は、生活習慣や寝室環境を見直してみることもひとつの方法です。
早朝覚醒
予定の時刻より早く目が覚め、その後眠れなくなる状態は、早朝覚醒と呼ばれることがあります。
早朝覚醒とは、必要とする睡眠の時間が経つ前に目が覚めてしまい、そのまま起きるしかない状態を指すことが多いです。
加齢やホルモンバランスの変化、精神的な緊張などが影響し、睡眠のリズムが崩れると、起床予定時刻よりも早く目覚めてしまうことがあると考えられています。
例えば、午前4時に目が覚め、布団の中で当日の仕事のことを考えているうちに完全に目が冴えてしまう、といった場合があります。
早朝に目覚める状態が長期間続く場合は、体や心の疲労が回復しにくくなるため、心身の健康状態を一度見直すと良いでしょう。
熟眠障害
睡眠時間は確保しているのに、熟睡感が乏しい状態は、熟眠障害が考えられます。
熟眠障害は、慢性的なストレスや睡眠時無呼吸症などが要因になりやすいと言えます。また、熟眠感が低いまま放置すると、日中のパフォーマンス低下につながる場合があると言われています。
次のような症状があれば、熟眠障害の可能性が考えられます。
- 長時間眠ったのに、午前中から強い眠気が続く
- 睡眠中に、足がピクピク動く
- 寝ている間のいびきが途切れると指摘される
上記の症状に該当する場合には、早めに医療機関に相談すると良いでしょう。
色々考えすぎて眠れないことに関するよくある質問
夜嫌なことばかり思い出すのはなぜですか?
夜は外部刺激が少なく、意識が内面に向きやすいため、日中に抑えていたネガティブな記憶が浮かびやすいと考えられています。
加えて、就寝前にはメラトニンが増える一方で、ストレスホルモンのコルチゾールが急減しやすいと言われます。
このホルモンの落差が気持ちの揺れを起こし、嫌な出来事を思い出しやすくする要因になる可能性が高いと言えるでしょう。
いろいろ考えすぎて眠れないときは何科を受診すればいいですか?
いろいろ考えすぎて眠れないときには、以下の診療科などを受診することが一般的です。
- 内科
- 心療内科
- 精神科
- 睡眠の悩みに特化した専門クリニック
また、不眠の症状の原因は複数あるため、その原因に適した治療を行える診療科を受診することが重要だとされています。
例えば、悩み事や心配事が原因で起こる不眠の場合は、心療内科や精神科に相談することで的確な治療を受けられる可能性が高いです。
また、睡眠に関する症状に特化したクリニックもあるため、心療内科などを受診するのに抵抗を感じる方でも、安心感を持って相談できると言えます。
不眠が長期化したり、日中の生活に支障が出ている場合は、早めの受診を検討してみると良いでしょう。
【監修者プロフィール】

江東こころのクリニック院長
谷本 幸多朗医師
九州大学医学部卒業後、帯広第一病院にて救急医療や外科及び内科の研修を経験する。
2013年より久喜すずのき病院にて精神科急性期医療を後期研修し精神保健指定医となる。
2018年より江東区にて一般メンタルクリニックに加えて認知症デイケアを併設した物忘れ外来も行う精神科クリニックである江東こころのクリニックを開業し、現在に至る。
▼主な経験
・精神保健指定医の経験あり
・製薬会社主催の各講演会や地域の医療職対象の勉強会において講演や座長の経験多数あり